後見の場合は無条件で後見人に代理権が与えられますが、保佐や補助の場合は保佐人(補助人)に与えられているのは、基本的に同意権のみ。つまり、ご本人が自ら契約などを行い、そういった法律行為に対して保佐人(補助人)が同意して初めて有効な法律行為になる、わけです。この代理権の範囲というのはあらかじめ決められており、「代理権目録」として登記されます。

ここからは私の実務でのお話ですが、とある案件で、就任当初に与えられていた代理権目録にはない項目の代理権が必要となりました。実際問題として、契約などをしていただいて、それに同意する……という手続きを踏めるだけの理解力や能力が本人にはないため、新たな代理権を与えてもらう必要があったのです。

いわば代理権を拡張することになるのですが、この場合は保佐人に対する代理権付与の申立を家庭裁判所に対して行います。必要な書類は申立時よりはずっと少なく、申立書や本人の同意書、変更があれば戸籍謄本や住民票です。なお、代理権目録には、新たに代理権を追加する項目のみにチェックを付けます。すでに代理権が付与されている項目にはチェックを付けなくてOKです。

申立後、家庭裁判所の調査官から連絡が入り、ご本人と面談して代理権を付与する意思を確認されます。これは、同意書を提出していても行われるようです。逆に言えば、様々な事情によって同意書が得られなくても、直接の面談で代理権を付与する意思を確認できれば、代理権は付与されるようです。

こうして代理権を付与することが相当と家庭裁判所が判断すれば、無事に保佐人(補助人)に代理権が与えられます。

ちなみに、補助人の場合は同意権を与えず、代理権のみを与えることも可能です。同意権のみだと、保佐人も補助人も実務の進め方に大きな影響が出るので、代理権の有無は重要です。同意権にするのか、代理権にするのか、それともどちらも与えるのか、そのあたりの判断は、ご本人の意思や状況次第となります。