「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」が平成28年10月13日から施行されていますが、これで何が変わったのでしょうか? ポイントはふたつあり…

  • 成年被後見人宛ての郵便物を成年後見人に転送できるようになった
  • 成年被後見人の死後に成年後見人が行うことができる事務手続きが明確化された

ということが挙げられます。いずれも、後見事務を行っている方にとっては少なからず影響がある内容です。

郵便物の転送に関しては、専門職後見人や同居していない親族後見人の利便性向上を図ったものですが、成年被後見人のプライバシーを考慮したうえで運用していく必要があります。勝手に自分宛ての郵便物を見られるのがイヤだ、と被後見人が考えるのであれば、基本的に無理強いはできない制度です。なお、後見の申立と同時にこの手続きを行うことはできないようです。

成年被後見人が死亡した場合、その時点で後見は終了します。つまり、死後に成年後見人が遺体を引き取ったり、埋葬等の手続きを行う義務はない、というよりも(権限がないため)できないのです。とはいえ、実務的にはそういった死後事務をせざるを得ない場合も多く、民法上の事務管理の規定を準用する解釈がなされるなどしてきました。

こういった死後事務に関する成年後見人の権限を明確化したのが、改正法です。遺体の引き取り、火葬や埋葬に関する契約(葬儀の契約は含まれない)、医療費や施設料(公共料金も含む)の支払いなどをする権限(義務ではない)が成年後見人にある、と明文化されたのです。もちろん、成年被後見人の意思に反しない場合であり、必要な時に限られます。

ちなみに、いずれの規定も成年後見に関するものです。任意後見や保佐、補助の場合は適用されません。